僕達は、職員室に向かう廊下を、を黙って2人で歩いている。


 …こんな時、人を笑わせる事ができる魔法が使えたらな。
 僕はふと、そんな事を思った。

 ―そういえば、僕の魔力はまだ残っているのだろうか。
 試してみよう。

 まずは、物を浮かす魔法。
 あそこにある花瓶を、浮かしてみよう。

 花瓶は軽く揺れた。
 でも浮きはせず、僕は胸に少しの痛みを感じた。



 僕はその時、かなり焦っていたから、痛みなんか気にしている余裕なんてなかった。
 とにかく、魔法を成功させよう。
 …姿よ消えろ!

 僕の姿は、消えなかった。
 胸の痛みが、強くなった。

「…つっっ。」
「斉藤君。どこか痛いの?保健室行けば?」
「いい。」

 痛みにかまっている暇なんかなかった。

 とにかく、集中しないと…
 僕は深く長く、深呼吸をした。

 …我は時の番人なり。
 我の周りに集まる時空の精達よ。Time is stop!!!


 一瞬、地面が歪んだような気がして時が止まったのかと思った。
 でも、次の瞬間。ものすごい痛みが僕の胸周辺に襲ってきた。

「うぅ…いっ、つっっぅ。」

 僕は、その場にしゃがみ込んだ。

「斉藤君?…やっぱぱ、保健室行った方がいいよ。それとも、私が先生を呼んでこようか?」

 真田が僕の肩に触れた。

 なぜか、痛みが退いてきた。

 なぜ…だろうか。

「大丈夫…だから。あと2分待って。」
「え。だって斉藤君、すごく苦しそうじゃん。」

 もう、痛みは半分ぐらいまで退いていた。
 余計な事も考えられるようになった。