―十一月二日。


女の子は首を傾げて、笑顔である一点を指差した。


「アキ兄ちゃんは、お姉ちゃんの恋人?好きなの?」


率直に聞いて、あたしを困らせるという子供らしい一面。


素直とでも言うか。


『明希はここで知り合った、友達かな?わかんない』


相手から期待通りの返事が欲しいとき、すぐ“わかんない”って濁す悪い癖。


「何か、可愛いね」


期待とはちょっと違う、予想外の返事。


『可愛いって…それ、あんたの方だと思うけどね』


女の子は一瞬目線を落とした後、すぐに笑顔になった。


「可愛いかな?初めて言われたよ。病気だし、可愛く無いからお母さんもお父さんもあたしの御見舞い来てくれ無いと思ってたの」


『仕事でなかなか来れないのかもよ?』


「一度も…来てくれたこと無いの。きっと、あたしが面倒だからだよ」


『それちゃんと伝えた?』


「言えない。言っちゃダメ…」


『伝わらないことってさ。沢山あるよね…』


「お姉ちゃんも経験したことあるの?」


『無いよ。ある訳ないじゃん』


「泣いた?」


『ぜんっぜん!そんな気配すら無かったからねえ』