きょうくんとみっちゃん



「確かに、浩介みたいなボケッとしたやつがちゃん付けで呼ばれるのはあまり違和感ないかもしれないけど、女の子が男にくん付けで呼ばれるのはどうかと思うな」


そう言ってきょうくんたちに近づいて来たのは眞木聡(まき さとる)くん。
幼稚園児とは思えないほど落ち着いている、非常にお利口な子だ。


「へんかなぁ〜?」


特に表情を変えるでもなく首を傾げるみっちゃん。




「…でも、きよちゃんだし…」


そうぼそっと呟いたのは坂本健太(さかもと けんた)くんで、未だにぴくぴくしている亮くんを無表情で突っついている。

小柄で無口な彼は、滅多に喋らない代わりに、たまに何かを言うと、とても大きな影響力を発揮した。


現に、先ほど冷静に正論を述べた聡くん、きょうくんのほっぺにすりすりしている咲ちゃん、ぴくぴくしている亮くんは一斉に動きを止めた。



「…確かに、雪花だからな」

ふっと目をそらす聡くん。

「雪花気持ちいい〜」

すりすりを再開する咲ちゃん。

「・・・・・」

亮くんに関しては微動だにすらしなくなったのだった。




こうして、みっちゃんは心置きなくきょうくんをきょうくんと呼べるようになった。


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