伝えきれない君の声



「…気を付けて、帰ってくださいね。」


まだ肌寒い朝の空気。
シャワーを浴びたあと、
彼は服を丁寧に着直し、玄関に立っている。


「うん。美春ちゃんも、仕事頑張ってね。」


微笑み、ドアのぶに手をかけた。


いきなりざわつく胸。
まだまだ話したいのに、
まだまだ聞きたいことがあるのに


帰ってしまうことが、
ものすごく切ない。


我が儘言って残ってもらったんだから、もう何も言えない…


すると、倉田瑞季は振り向き
私の頭をポンポンと撫でた。



「大丈夫だよ。」


思いがけず、
そんな言葉が返ってきた。