伝えきれない君の声





「お疲れさま」


佐野さんが、ギターをギターケースにしまう私に声をかけてくれた。


「お疲れさまです。」


私も手を止め、
振り返り頭を下げる。


お客さんたちは満足げに
お店を後にして、


余韻が立ち込めるこの場所には、もう私たちバンドメンバーしかいない。


もちろん、あの2人もいなくなっていた。


「なんだか今日、美春ちゃんいつもより気合い入ってた?」


「そう…ですか?」


「なんとなく。ちょっと肩に力入ってたような、気がしただけ。」


さすが佐野さん。


見抜かれていた。