伝えきれない君の声



今は、


彼が私と同じ空間にいることが奇跡で、幸せで


それだけでいい。
そう、思った。









「美味しい!」


「ほんと?良かった。」


彼の作る料理は見事に美味しくて

悔しいけど、私より上手だ。


「私、料理勉強し直さないとかも…」


「俺で良かったらいつでも作りにくるよ。」


なんて冗談を言われて、思わず笑ってしまった。


でも、本当に来てくれたらいいのに。


毎日でも、会いたいのに。


なんていう欲望が心を締め付けたから、
それ以上何も言えなかった。




「倉田さんは、1人暮らしですか?」


「ううん。俺は実家。」


「そうなんですか?意外…」


「よく言われる。」


微笑むと、私の入れたお茶を口にした。


「1人暮らし…憧れるよ。」


と、ポツリと溢した。