「うん?」
「わ…たし、あの…今、スッピンだし、部屋着、だし、髪もボサボサで…あの…」
顔を見られたくなくて、
下を向く私。
――沈黙。
正直に、言い過ぎたかも…
なぜか泣きそうになり、
言葉も出ない。
そんなとき
「君は、風邪を引いてて、スッピンは当たり前だし、部屋着も当たり前。
それに、髪も。」
そしてふと感じる、温もり。
彼が、私の髪に指を通す。
「それを承知で、来てるんだ。
素を見れるなんて、彼氏じゃないのに特権だよ。」
悪戯に笑い、ガチャンとドアを閉めた。
「体調、善くなった?」
心配そうに、顔を覗き込む。
額を触る、大きな掌。
「…熱は、今は無いみたいだね。」
離れても、触れた部分が、熱い。
ドキドキしてるのと裏腹に、
なんだかほんとに泣きそうになる。
ああ私、
こんなになるほど
倉田瑞季に惹かれてる。
彼は化粧っ気のない私の頬に触れ
「……ごめんね。」
何故か
そう呟いた。


