「…すみません…」 ドアのほうから、声がした。 食器を掴みかけた手を止めて、 顔を上げる。 そこには、 若くて美しい女性がいた。 茶色の髪を丁寧に巻き、 オフホワイトのスプリングコートを着て ヒールのある焦げ茶のパンプスを履いている。 …なんだか、 失礼だけど、このコーヒーショップには不似合いな人。 空気が、違う。 「あの…、注文いいかしら…?」 ――いいかしら…… その言葉遣いに、 この人の身分を感じた。 (セレブかな?)