「栗田美春さん、スタンバイお願いします。」
私より少し年上のADさんに促され、私は会場の袖に待機する。
――知らなかった。
審査員との距離が、こんなに近いなんて。
倉田瑞季は私の存在には全く気付かずに、長い睫毛を伏せ、資料に目を通している。
心なしか、鼓動が速い。
緊張しているから?
それとも……
「それでは、とうとう最後の方に参りましょう。
栗田美春さんです、どうぞ!」
やけに元気な司会者の言葉運び。
――ドキリ。
倉田瑞季の動きが固まるのがわかった。
ギターをぎゅっと握りしめ、
会場の中央へと向かう。
一歩、一歩、進みだす。
一歩、一歩、近づく。
前を見れず、下を見ていた私はやっとのことで顔を上げる。
そして………
彼へと目線を合わせた。


