伝えきれない君の声



冷笑…とでも言うんだろうか。


去りゆく背中を、
ずっと睨み付けていた。


たぶん私、いますごく可愛くない。



「…んじゃ、そろそろ控え室に行くか。」


菅原さんは私を見ずに歩きだした。
私もそれに続く。


何とも言えない、空気。


でも気まずさよりも、
彼女に対する怒りのほうが勝っていて、
菅原さんの表情には気付けていなかった。



彼が、
どうして私をここに呼んだかというその真意も、私は知る由もなかった。











「あと、15分後くらいだな。」


控え室に着いて暫くすると、
もう私しか残っていない状況。


私の隣には、菅原さん。


疑問は、1つ。




「菅原さん」


「なに?」


「あの…お仕事、良いんですか?この番組の担当なんですよね?」

「うん、あんま良くない。」


「えっ?!」


「でも、悪くもない。」


「…え?」


「あんたが歌う前には、居たかったんだ。…隣に。」


菅原さんは、ゆっくりと私のほうを見た。


そして悲しげに眉を下げる。


こんな表情、初めて見た。




「…知ってたんだよ。」