伝えきれない君の声



――また、今夜に。


そう言ったあの人、
倉田瑞季を探しているなんて、
恥ずかしくて言えない。


だってこれじゃあ、
まるで恋してるみたいじゃない。


「栗田、じゃあ今日もボーカル頼むよ!」


店長はニカッと笑い、
肩にポンッと手を置いた。


「はいっ。頑張ります。」


私の歌を、
この人たちは楽しみにしてくれている。


それが、
すごくすごく嬉しい。


たとえ路上で足を止めてくれなくても、
ここでは、みんなが耳を傾けてくれるから。


私が歌う、
意味がここにはあるから。









店長たちのバンドサウンドで
ムードは一気に盛り上がり、


私もギターを手に、
マイクへと向かう。


そして………