しらたまがーるず


 しかし、いくら採用決定時に恩があるとは言っても、今の俺にとって野球は苦い思い出。

 二つ返事では頷けない。

 とりあえず、桜井さんに頼んで見学させてもらうことになったのだが……

「……もしかして、部員はこれで全部?」

「そうよ」

 キャッチボールをしているのが六人。隅で素振りをしているのが一人。桜井さんを入れても全部で八人。

「桜井さんさ、野球って何人でするか知ってる?」

「あたし、一応リトルではずっと野球やってたのよ。知ってるに決まってるでしょ」

 桜井さん、経験者だったのか。

「つい最近できたばかりの部活動だから、まだメンバーが足りないのよ。まだケンゴが顧問になってくれてないから部活じゃなくて愛好会だしね」

「やっぱり作ったのは桜井さん?」

「そうよ」

 女子の野球部なんて自然とできるわけがないし、これもきっと祖父の権力を乱用したんだろうな。

「とりあえず、みんなに紹介するからついて来て」

「えっ、俺まだ顧問引き受けるとは言ってないんだけど」

「今はそうじゃなくても、近いうちに必ずケンゴは女子野球部の顧問になる。だから紹介するの」

 言い切られてしまった。

 ま、顧問にならないならクビとか言われたらたまったもんじゃないし、きっと従うしかないんだろうけど……

「みんなー、ちょっと練習止めて集まってーっ!」

 桜井さんが集合をかけると、それぞれがその場にグローブやバットを置いてから、こちらに駆け寄って来る。

 その中には先ほど話に上がった朝倉さんの他にも、俺が担任を務めるD組に所属していた宮永さんの姿もあった。