あめとてるてる坊主

 雑踏と雨音で聞き取れなかったけれど、私の右腕を彼がつかんで走り出す。

 雨音に合わせるように胸が高鳴った。

 生ぬるい雨は不快でたまらなかったのに、掴まれた右手首は熱くてたまらなくて、心地が良かった。


 ひとまず建物に逃げ込んだ私たちと同じ場所に、次々と人々がやってくる。

 濡れた服を気にしながら、隣の彼を見れば、眼鏡のしずくを払っていた。

 もう掴まれていない右手首がいまだに熱い。

 無意識のうちにそこに手をやっていた。