今日、彼のかばんにてるてる坊主はいなかった。

 いつものかばんを持ってくるわけないから当然なんだけど。

 すごく寂しいんだ。

 すごく情けないんだ。

 すごくくやしいんだ。

 知り合いから前に進めない臆病な自分が、本当に嫌なんだ。

 私よりずっと前にいる沙世ちゃんが、羨ましいんだ。


 そう、わかってる。

 心にかかる雲のことを、嫉妬とよぶこと。

 ずっとずっと、彼に沙世ちゃんが近いことも。

 おそろいのてるてる坊主じゃ、何もかなわないことも。


 うん、わかってる。

 妬ましくて妬ましくて、そればっかりの私は醜い。