駄目だ。


 私は俯いた。

 思いがせり上がってきた。

 私は大きく息を吸った。

 彼の時とは違う、息苦しさ。

 しっかりしなくちゃ。

 私がみんなの雰囲気を悪くしちゃいけない。


 ただの雑音だったのが、鮮明な声になる。

 呼び込みの声、花火を楽しみに待つ声、天気を心配する声。

 私だけが、暗い気持ちを抱えている気がした。

 私は場違いな気がして。

 独りぼっちな気がしたんだ。


 顔をあげたら、見慣れた背中はなかった。


 私は本当に独りぼっちになってしまった。



(2)君の左隣(完)