その背中を見送って、私は自分の両ひざにかかったスポーツメーカーの名が入ったタオルを見やる。

 彼が貸してくれたもの。


『これ、使って』


 どきどきとは何かが違う。

 その声を聞いた時、その目と会ったとき。

 私は一瞬、息の吸い方を忘れた。

 そして今、思い出しても、息が苦しくなる。

 胸はドキドキしている。

 びっくりするぐらい、高鳴っていた。