「そうだね……ロマンティックには程遠いよね、ここは」


 やんわりと笑う天野君に、私は小さく同意した。

 静かに胸をノックする鼓動は、とても心地が良かった。


「俺さ……気になる子がいるんだ」


 波の寄せる音にかき消されるような小さな声で、彼は突然言った。

 その言葉は鋭く耳に刺さった。


 驚きで見上げた私に、困ったように笑った。


「誰にもまだ言ってないんだ、内緒な」


 人差し指を唇に添えた。


 胸をノックする音が鋭くなって、痛くてたまらなかった。