あえて言うなら、全部、になるんだろうか。

 いえ、全部知らないから、全部とも言えないけれど。

 私の知っている、全部であることは確かだった。


「そんなの、おかしいよ」


 固く、それでいて重い声音だった。


「どこを好きになったか言えないなんて、おかしい。好きなら、どこが好きか言えるはずだもの」


 向けられた目は睨んでいるようだった。


「私には今まで、どこを好きになったか言えたよ。
私はちゃんと、今まで好きになったところを言えた。どこを好きになったかちゃんと。
なんで晴ちゃんにはないの?普通あるでしょ?そういうもんでしょ?」