上がる花火に顔が照らされる。

 周りから聞こえる感嘆の声。

 なのに私たちは、ただ静かに空を見上げていた。

 いつもと違う沙世ちゃん。

 それを気遣う里美ちゃん。

 雰囲気のおかしい私たちを気にする天野君たち。

 そして、後悔する私。


 言わなきゃよかった。

 そしたら、こんなことにならなかった。

 花火は私たちを照らす。

 なのに、私たちの顔に笑顔は咲かなかった。

 夕立でぬれた地面。

 肩にかかったタオルに、私は顔をうずめた。



(4)好きな人(完)
【2】遠雷【完】