「シンはどうしてここへ来たの?」


我に返ってから真っ先に思ったこと。


「ショウゴから何も聞いてない?」

「うん、何も。」


ここへ来たのはショウゴに招かれたから。

なのに肝心の彼はここにいない。

シンがここにいることで彼の言った【プレゼント】の意味は分かった。

何よりも欲しかったプレゼント。

感謝してもしきれない。

だけど、彼はどうしてシンの居場所が分かったのかな。


「10日くらい前にあたしの大学の正門のところにショウゴがいたの。」

「え!?」

驚きは隠せなかった。

そんな話、彼は一言も私には教えてくれていなかったから。

「その時にショウゴがあたしに会いたがってる人がいるから帰ってきてほしいって言われたの。」

「うん。」

「誰か聞いても全然教えてもらえなくて…ただその時のショウゴが必死だったから動かされてここへと来た。」

「そっか…」


シンが言葉を閉ざす。

そして数秒の沈黙の後、彼女が再び口を開いた。


「…ショウゴを見て真っ先に思い出したのは琴だったよ。」

「…っ、うん。」

「だけど…あたしに会いたがってる人って聞いて琴は違うなって…そう思った。期待なんて出来なかったよ。」

「…どう、して?」

「あたしはいっぱい琴のことを傷つけちゃったから。」

「そんなことっ!」


予想外のシンの言葉。

シンが私を傷つけたのではなくて私がシンを傷つけたのに。


「優しい琴に自分の気持ちを押し付けて苦しい思いをいっぱいさせちゃったもの。」


シンの言葉に止まった涙が再び零れた。


「シンは…」

「うん」

「どうして、誰にも言わないで…いなくなっちゃったの?」

「それは…お父さんの転勤と上手く重なって…」

「…うん。」


聞いている質問とは違う答え。

それでも真っ直ぐにシンの瞳を見続ける。

繋いだ手に少し力を込めた。


「……琴といるのが…辛かった、から。」

「っ!」