「普通に生きる」


それが私の、この世界を生きる術だった。

誰の記憶にも残らず、誰の思い出にもならないように。

平凡に、平凡に。

無茶をせず、それでいて劣等生にならない努力をする。

そこそこの成績を保つ、それは特に苦痛ではなかった。

ただ、運動神経だけはどうにもならず、平均以下にはなってしまっても、体育会系の教師は運動の出来る子に注目するだけなので問題はない。

大人達の注目は上でも下でも、目立つ子に行くものだと知ったのはいつごろだろう。

そこそこの優等生でいれば、いつか私はたくさんの誰かに埋もれる事が出来る。



普通に生きる、それこそが自分が1番傷つかないでいられるやり方だった。