【第一章】





あたしは鳴り止まぬケータイの着信を切る。


しかし、またケータイは同じ曲を歌いだす。



「電話に出ないのなら電源を切ればいいじゃない。」



隣で服を選んでいるユキナが興味なさそうに言う。



ここはショッピングモールで

ユキナの買い物に付き合わされているところ。



「だって他の人から大事な連絡来たらイヤじゃん!」



「大事な連絡?なに?愛の告白とか?


だったら、その電話の相手も大事な連絡に入るじゃない。」



ユキナはつんとした声で言い、“試着してくる”とその場を離れる。



あたしは言い返せずに黙り込んだ。



愛の告白じゃなくて仕事の使令だよ。



ケータイの着信音が響き、周りはあたしを見て不快な顔をする。



はいはい、出ますよ。