夕方5時。空が無駄に赤い。

私は学校から家に向かって歩いている。

あの後私はこの悪い癖をたびたび発動させてしまい、しかもなにかの誤解を招くような発言までしてしまったようで凄く、ものすごーく怒られた。

しかもだいたい2時間くらいは先生の説教に付き合わされた。

その途中はまた癖が出て事態が深刻化しないかどうかが微妙に心配だった。心を無にする重要性に気付いた私はきっと少し大人になったはずだ。

説教にも一つのスリルがある事も知った。しかしあまり心地のいいものではない。

私が求めてるのは、こんなスリルじゃない。

もっと熱い……こんな生温くない……危ない……麻薬のようなスリルが欲しい……。


7時頃、寄り道をしながらも家の前に着いた私はなんとなく家をまじまじと見つめてみた。帰る時間が普段よりも遅いために普段住む家が少し違うものに感じたからだ。

住宅街の端っこに存在し、隣には民家と交差点。周りはコンクリートの壁に囲まれ、右端には中に入るための門が着いている。

家の壁は白く屋根は光が無いせいで黒く見えるが実際は赤で、所々に窓が付いている二階建て。ごくごく普通な家だ。

微妙に錆び付いた鉄の門を押して家の敷地に入る。敷地と言ってもたいしたことはない。玄関まではせいぜい5、6歩程度しかない。

何の変哲も無い扉を開けて「ただいま」と言い慣れた台詞を言えば4組の靴が綺麗に並んだ玄関が目に飛び込んできて、奥からは野菜を包丁で刻む音と共に複数の「おかえり」と聞き慣れた台詞が返ってくる。

靴を脱いで一旦階段を上って自分の部屋に入り着替えを済ませると、また階段を降りて居間へと向かう。

真ん中に置かれた畳一つ分くらいの机の周りには母を除いた家族全員が揃い、机の上には5つのお椀と箸に数々のおかず。部屋の隅にはソファが置いてあり、向かい合うようにして野球の試合を映し出す大型テレビが置いてある。しかし、何故か白黒。今時逆に珍しい。

「あ、お姉ちゃん! ご飯の準備出来てるよー!」

そう声を掛けてくれるのは我が弟の琢磨(たくま)だ。

まだ小学2年生のちびっこだが無邪気で元気な性格の上、気遣いまで出来るという私の数倍よく出来た弟である。

親にはよく「琢磨を見習え」などと言われるが、私は気にしない。