名前を呼ばれて顔を上げると爽やかスマイルを浮かべる苑くんが立っていた。



「苑くん……どうしたの?」

「放課後、伊桜ちゃんに話したい事があるんだけど予定ある?」

「ないけど……もれなく煉も一緒だよ」

「全然構わないよ。じゃあ放課後、図書室で待ってるから」



そう言って苑くんは去って行った。

姿がなくなると共に黄色い声が消えると教室同様に痛い視線が突き刺さる。


唯一の安らぎタイムが台無し……。

再びテーブルに突っ伏すと今度はポケットの中の携帯が震え始めた。

ディスプレイに並ぶ着信マークと煉の文字を見て零れる溜め息。


今度は一体何なのよ……。



「もしもし……」

『溜め息吐くなんて良い度胸じゃん』

「は!?何で溜め息吐いたの知ってんの!?」

『保健室の窓から丸見えだバーカ』



急いで保健室の方を見ると窓に寄り掛かりこっちを見る煉の姿があった。

それを見て血の気が引いた気がした。