「いやーまじ助かったわ、でかしたぞ神崎。
あの集団に捕まると厄介なんだよな~」
先生はにっと笑いながらタバコに火をつけた。
この渡り廊下は、先生達の唯一の喫煙場所だ。
先生は部員の前だと普段のイメージとかなり変わる。
『当たり障りのない先生』から、普通の二十代の男のひとの顔になる。
こっちの素の先生はちょっと軽いけど、でもなんだか身近なかんじ。
「んで、どうした?
…まあお前の事だから、嘉瀬の事だろ?」
「はい。」
なっちゃんの名前に、その場の空気がはりつめた。
あたしは、ぐっと力を込めると先生を真っ直ぐ見つめた。
「あたし、なっちゃんを信じてます。
なっちゃんはタバコなんてしない。あんな事、起こすわけないって。
だからいろいろ考えてたんです。もしかしたら、」
「嘉瀬は誰かにはめられて、他に真犯人がいるんじゃないか、って?」
あたし達は先生の言葉に目を見開いた。
「先生もやっぱりそう思ってるんですか!?」
「ま、普段のあいつをみてるしな。
あいつ、そういうとこクソ真面目だからな。」
「じゃあ他の先生達にもそう言ってくださいよ!」
「俺みたいなぺーぺーの言うことじゃお偉方の先生達は納得できないんだと」
先生はタバコの煙をひとつ大きくはきだした。
「俺だってどうにかしてやりたいよ。」
「じゃあ鍵の貸し出し名簿見せてください!」
「なんだよいきなり?」
あたしはさっき思いついたことを先生に話した。

