「あか」
「神埼!!」
それまでされるがままになっていたハルが急に、俺の声がかき消されるほどの大声をあげた。
「だ、大丈ぶ…痛!」
咄嗟に手をついたとき地面ですったのか、あかりの表情に痛みが走り、手から血が流れた。
ずっと伏せられていたハルの瞳が、一度あかりの方を見たあと、俺の方に戻ってきた時、その瞳には強い怒りが浮かんでいた。
ハルのこんな顔、今まで一度も見たことがなかつた。
「那月」
低い声とともに、ハルの拳が見えたと思った次の瞬間。
ゴッ!!
俺の頬に強烈な痛みが走った。
「ってぇな!」
ガッ!!
ゴッ!!
俺が殴り返すとハルも殴り返す。
こいつとは長い付き合いだか、そうえいばこんな殴りあいはおろか、喧嘩らしい喧嘩さえしたことがなかった。
でも、今は……
ただ、こいつにだけは負けられない。
俺の中の声がそういっている。今は一歩も引きたくない。
お互い、相手以外は何も目に入らなくなっていた。

