人気のなくなった廊下を、俺はぼんやりと歩いていた。
頭をよぎるのは、神埼の事ばかり。
昨日の、楽しそうな彼女の笑顔。
あの時ショップで、リストバンドを握り締め微笑んでいた彼女は、本当に幸せそうだった。
その心にあるのが俺ではなかったとしても、そんな彼女と微笑みあえることに、俺は幸せを感じていた。
彼女が俺を愛してくれなくても、
彼女が幸せならそれでいい。
本気でそんなことを思った自分に驚いた。
だから余計に、俺はあのとき那月が許せなかった。
あんなにも自分を思っている彼女を、試そうとした那月が。
あのときボーリング場で、俺は那月の挑発にのってやりながら、本当に彼女を奪ってやりたかった。
俺のほうがもっと彼女を大切にしてやれる。
俺だったら、彼女にこんな顔をさせたりしない。
俺だったら、俺ならもっと…!!
でも……それは、所詮は俺のエゴだ。
一番大切なのは、彼女の気持ち。
彼女の中には、いつだって那月がいる。
良くも悪くも、一番彼女の心を動かすのは、あいつなんだ。
だから俺は、今のままでいい。
幸せそうな彼女と微笑みあい、
傷ついた彼女には、手を差し伸べる。
恋人になれなくてもいい。
友達でいい。
それで、ずっと彼女のそばに、いられるなら…

