「いつもありがとう小城さん、図書室の仕事手伝ってもらって。おかけで助るわ。」
「いえ、では私はこれで失礼します。」
司書の先生に軽く挨拶をして、私は職員室を出た。
先生に頼りにされる優等生。それが私の学校での評価。
でも、そんなもの、私はべつに望んではいない。図書委員だって、なりたくてなったわけじゃないし。私は…
本当は、彼と一緒の委員がしたかった。
なのに彼は…
「おっ!小城~」
ぼんやりと階段を降りていた私は、下から上がってきた声に思わずびくりと飛び跳ねた。
「嘉瀬君」
不意打ちに、とたんに赤く染まる私の頬。
私がそれを隠すように顔をそらすと、嘉瀬君の横で大和先生が笑った気がした。
この先生は苦手。
いつも心を見透かしたような目をしてる。
「お前も手伝い押し付けられたくちか?お互い大変だな。
じゃあな、気を付けて帰れよ~」
「う、うん。嘉瀬君も。」
「おう!」
嘉瀬君は手を振りながら、先生と職員室の方へと去っていった。
彼の後ろ姿を見送りながら、私の心臓はどきどきと踊っていた。
2学期最後に言葉を交わせた。
ただそれだけで、私は幸せでいっぱいだった。

