キーン コーン カーン コーン
「よ~し、みんな席につけー!」
大きな声とともに、担任の牛津(うしず)先生が勢いよく入ってきた。
「今日は、これから役員決めを行う。
各自、やりたいものにどんどん立候補しなさい!推薦もオッケーだぞ!」
そう言うと、黒板に次々と役員名を書いていく。
濃いごいと書かれた文字を満足気に眺めると、牛津先生は笑顔で振り返った。
「さあ、どうした!ん?みんなやりたいものは決まったか?ほらほら、早くしないと人気のあるものからなくなるぞ~」
「うざ~」
「誰だー今ウザいとかいったやつは~ほらほら!みんな、もう手あげていいんだぞ」
先生は、人生相談とかしたくないタイプだな。だって、悩むこととかなさそうなんだもん。
まあ、いい先生なんだけど、熱血を通り越したこの暑苦しさときたら。彼は小学校の先生を目指すべきだったのではないだろうか。
目を爛々と輝かせ、先生はみんなの立候補を待っている。
でも、いくら待ったって立候補する人なんかいるわけない。必ず一人一役やらなきゃならないんならまだしも、クラス35人に対して役員数は十個もない。それを男女一人ずつだしていったとして、クラスの約半数は役員から免れるのだ。
自ら面倒な役員をかってでる物好きはいない。
しばしの沈黙の後、花菜がすっと手をあげた。
「おお!千代田!立候補か!?」
「違います。」
牛津先生の期待に満ちた声を一蹴して、花菜は続けた。
「このままでは決まらないので、くじにするべきだと思います。」

