「あかり、さっき俺がいなかった間、ハルからなんか言われた?」
突然なっちゃんの口から出た言葉に、あたしの心臓は飛び上がるほどにびくりと跳ねた。
「え!?あ、う、うん、あの、えと」
しどろもどろになるあたしに、なっちゃんは『そっか』と一言言うと、そのままあたしを抱き寄せた。
「この前、俺も言われた。」
「え??」
あたしは勢いよくなっちゃんを見上げた。
なっちゃんは少し困ったような、切なそうな笑顔を見せた。
「『もう隠せない』って、この前見舞いに行ったとき、ハルが言ったんだ。」
『もう隠せない』そう言ったときの、ハルくんの切なそうな表情があたしの脳裏に蘇った。
「ついにきたか、って思った。」
「え?」
きょとんとしたあたしの頬を優しく撫でると、なっちゃんは続けた。
「俺さ、本当は気づいてたんだ。ハルの気持ち。でもずっと知らんぷりしてた。
長い付き合いだからなぁ。あいつが俺の事わかるように、俺だってあいつの事なら何でもわかる。
あいつが苦しんでるの知ってて、でもあいつがなにも言わないなら、いいや、って。
俺、ズルいよな…
この前、あかりのお父さんに『近づかないでほしい』って言われたとき、俺が身を引いてハルに任せんのもありなんじゃないか、って思ったりもした。
でもさ、やっぱ駄目だったわ!」
そう言うと、なっちゃんはギュウッとあたしを抱く腕に力を入れた。
「俺、どうやったって、あかりを諦めらんない。おまえなしじゃいられない。
だから、ハルにも譲れない。」
「なっちゃん…」
あたしは胸が熱くなるのを感じた。
「あ!でもな、あいつは俺の親友だ。それはこれから先もずっと変わらない。
だからお前は変な心配はするんじゃないぞ?
あかりは鈍いくせに変なとこだけ敏感だからな。」
そう言ってなっちゃんは、あたしの頭にコツンと軽く頭突きした。
「いっ!?」
そのままおでこをくっ付けると、なっちゃんはにっと笑った。
「お前に選ばれる自信、あるしな」
ぼっとゆで上がるあたしの顔。
冬の夜空に、あたしの頭から湯気があがる。
「さ、お前を早く送り届けないとな」
なっちゃんはあたしの手を引き、すぐそこに見える家へと歩きだした。
手をひかれながら、あたしはすごく幸せだった。
…この時は、思いもしなかった。
あの言葉がなっちゃんの強がりだったなんて…

