思わず持っていた食べかけのたい焼きを落としかけたあたしは、手元に目線を移し慌ててそれを持ち直した。
「も、もう!あはは、ハルくんもそんな冗談言うんだね」
「冗談じゃない」
たい焼きをいじっていた手がびくりと止まる。
自分の手元を見つめながら、あたしはドクンドクンと大きな鼓動が自分の中で暴れまわるのを感じた。
どうしていいか、わからない
「神埼、こっちみて」
ハルくんの真剣な声。
あたしは戸惑いながらも、ゆっくりと顔を上げた。
長めの黒いさらさらの前髪から覗く、まっすぐな彼の瞳。その強い瞳は、それが本気だということを主張している。
「あの、あたしは」
なっちゃんが…そう言いかけると、それを遮るように彼は言った。
「わかってるよ。神埼が那月を好きなのは、二人が付き合うずっと前から知ってた。
だから俺は、ずっと自分の気持ちを隠してたんだ。」
「え…!?」
あたしはぽかんと固まった。
そんなあたしを見て、ハルくんは少しだけくすりと笑った。
「俺は、ずっとお前が好きだった。
ずっとお前をみてたから、おまえの気持ちにもすぐに気づいた。
……那月はいいやつだし、親友だ。あいつがお前を気に入ってるのもわかってたし。
だから、俺は自分の気持ちに蓋をした。
二人が幸せそうなら、それも悪くない。
そんな二人を見てたら、この気持ちもそのうち消えるんじゃないかって。
でも、」
ハルくんの瞳が、まるであたしを射抜くように強く見つめる。
「でも、今回のことで気づいたんだ。
この気持ちは、抑えられない。消えてなくなったりなんかしない。
それどころか、俺自身気づかないうちに、とんでもなく大きくなってたんだってな。
おまえの気持ちは知ってる、もちろん那月の気持ちも。
俺の気持ちがお前達を苦しめるかもしれない。
でもそれでも俺は…………
この想いを、もう隠せない。」

