「ったく、まあいいや。これ食おうぜ。」
口を尖らしていたなっちゃんは、そう言ってベット横の椅子にドカリと座り、持っていた紙袋をがさりと開けた。
とたんに広がる香ばしい匂い。
ふあ~美味しそう~
じゃなくて!!
「ちょっとなっちゃん!!」
あたしは慌ててなっちゃんから紙袋を取り上げた。
「これはハルくんへのお見舞いでしょ!」
「俺にお見舞い?なに?なんかいい匂い。」
「うん!えへへ、ハルくん甘いの好きでしょ?病院だとなかなかこういうの食べれないと思って」
あたしはハルくんに紙袋を差し出した。
受け取った彼が紙袋をあけると、香ばしい匂いと共に白い湯気がふわりとあがった。
「たい焼きかぁ!
しかもこれ、鯛宝楽のだ!」
「わかる!?さすがハルくん!」
「当たり前じゃん。中身は…」
「もち、黒あん!」
「やった!やっぱたい焼きは黒あんだよな」
「ね♪」
「どうせ俺はカスタードが好きだよ」
盛り上がるあたしとハルくんを尻目に半イジケ気味のなっちゃん。

