「あかり」
「は、はひ!!」
思わず変な声が出てしまったあたし。
耳まで真っ赤になるあたしに、なっちゃんはふっと笑った。
そしてそのまま、なっちゃんはあたしをすっぽりと優しく抱き締めた。
そして頭の上から、なっちゃんの真剣な声がきこえた。
「あかり、そのまま聞いて。
まずは、ごめん。お前をひどい目にあわせて。」
「!なっちゃん、それは」
思わず顔をあげようとしたあたしを、なっちゃんが強く抱き締めた。
「いや。俺はお前を守れなかった。
俺はそれが、悔しかった。つらかった。
だから、あかりやあかりの両親に何度も謝った。それしか出来ないと思ったから。
あかりのお父さんに『もうあかりに近づかないでくれ』って言われたときも、それであかりを守れるならって思った。
でも、離れてみて、わかったんだ。
たった数日間だったけど、
あかりに会えない、触れられない。それだけで、俺は、どうにかなりそうなほど辛かった。
どれだけ自分がお前を欲しているのか思い知らされたよ。
あかりが隣にいてくれないと、俺はもう耐えられない。
俺にはおまえが必要だ。
離れるなんて、絶対にできない。
だから、」
なっちゃんはあたしを抱き締めていた腕をゆるめた。見上げたなっちゃんの瞳はとても澄んでいて、その中に映るのは、あたしの姿だけ。
「これから先、何が起こっても、必ず俺が守ってみせる。
だから、これからもずっと、俺と一緒にいてほしい。
あかり、愛してる」
あたしの瞳から、一粒の涙が零れ頬に一筋の線を描いた。
嬉しかった。
大好きな人が、あたしを必要だと言ってくれる。愛してると言ってくれる。
これ以上の幸せなんかない。
なっちゃんは温かい手であたしの頬の涙をぬぐい、そのままあたしの頬を包んだ。
ゆっくりと重なりあう二人の唇。
そんなあたし達を包み込むように、
今冬はじめての雪が、空から優しく舞い降りはじめていた。

