車で病院に向かう中、2人は無言だった。

貴矢は、
『零が手術終わるまで必ず待ってるから。』

手術は日帰りなので、その辺で時間を潰していると言った。

私は、少し微笑んでいたと思う。
貴矢の不安な気持ちを安心させたくて。



貴矢に手を振って、手術の準備に入った。


私は、肉体は丈夫なので、今まで手術を受けた事が無い。

最初は緊張していたけど、手術台に上がると自然と心は落ち着いていた。

もう、決めた事…。




気がつくと、もうベッドの上だった。
全身麻酔で朦朧とする意識。
手足は言う事をきかない。


だけど、お腹の激痛に、もがいていた。
生理痛どころの痛みでは無い。
じっとしていられない痛み。
麻酔が、まだ効いていたから多少は良かったのかもしれないけど…。



術後、夢の中で、身体を動かされていたのは、覚えている。
その中で、
『お腹が痛いよ…。』
と、うめき声を上げていた気がする。



でも、こんな苦しみに比べたら、お腹の赤ちゃんの気持ちは…?
自分に下された罰だと思い、苦しみに耐えた。


自分の身体が空っぽ。
独りぽっちになったんだなぁ…。
そんな感覚になった。
これで良かったんだ…。
そう言い聞かせた。



術後2時間位、たったのだろうか。
私は自分の足で歩ける様になった。

受け付けで、痛み止めの薬代の会計を終わらせると、駐車場に、すでに貴矢が待っていた。

私よりも、暗い顔をしている。