幸いな事に、いつも診てもらっているクリニックの先生が、ある曜日は、引っ越す場所に近い同じクリニックに居るので、引っ越しても診てもらえる事だった。


私は、全てを捨てて、貴矢との生活を選んだ。
仕事を辞め、知らない土地、知り合いも居ない。
この歳になっても親と離れて暮らした事も無い。
でも、貴矢に付いて行こうと決めた。



職場は、7月末で退職と決めた。
8月から、新しい家で暮らし始めた。


退職当日、個別にプレゼントを頂いた。
引っ越しに役立つものや、料理に使うと便利な物。
薫からは、料理が苦手な私の為に料理本を貰った。


そして、"皆から"と、大きな大きな真っ赤な薔薇やカーネーションが敷き詰められた、私をイメージしたという色、赤色の花束を頂いた。

私が1人1人に挨拶に行くと、泣きそうになる人も居て、私も、もらい泣きしそうになったけど、最後だから、笑顔でお別れした。


もらった手紙にも、感謝の言葉が綴られていた。
"一緒に、お店の事を考えてくれる人が居なくなるのは、寂しいです…。"


私は、何て恵まれた職場に居たんだろうと、改めて思った。

もちろん、8年の中で色々あったし、何度も辞めようと想ったけど、辞めないで頑張って良かった…。

頂いた、大切な手紙などは、もちろん大切に、しまってある。
私は、人から頂いたものは、捨てる事は出来ない。

こうして、8年勤めた職場を退職した。