何ヶ月たっただろう。
相変わらず居場所を教えてくれず、私は毎日電話をする日々だった。


そんなある日、仕事に行く途中、私の携帯が鳴った。
母からだった。

『今日、帰るから。お寿司買って帰るね。』
何だか、声が明るかった。
私は、
『うん。ココが待ってるから、早く帰って来てね。』
そう言って電話を切った。良かった…。


家に帰ると、父方の実家やホテルを転々としていたと聞いた。

そんな時、本屋で見つけた、ある本を読んだら、自分の沈んだ気持ちが分かったそうだ。


鬱病だった。

自分に当てはまる事ばかり書いてあったそうだ。

それから、半ば強引に、父を引っ張って、母と一緒に、その病院に通い始めた。

担当の先生は、両親共同じ。
診断結果は、やはり2人とも"鬱病"。
母のが、重度だった。


父の、あの豹変ぶりの原因は、仕事のストレスから来ているらしい。

母によると、通院し始めの頃の父は、自分より歳下の先生に、ナメてかかってたそうだ。


でも、母が、
『最近の、ご主人、顔つきが大分変わりましたね。』
と聞かされた様で、母は、病院に行って良かったと言っている。


父も、髪を切り、髭も剃り、前の父に戻っている。
『髪型、似合ってるよ。』
と、私は言った。


振り返れば、あの頃、お金のやりくりが大変だったと母は言っている。
私は、そんな風に感じなかった。
子供に苦労をさせない。
さすが、母親だと思った。


今現在感じるのは、この頃の私の両親は、詞音に振り回されていた時の私に、よく似ている。そう思う。


そんな両親を見てきたから、私は両親と同じ病院に変える事にした。