君の名前



話がそれだけなら、俺はそう言って階段を下った。


久瀬は、顔を歪ませたまま動かなかった。









こんなこと初めてだった。


今まで彼女の彼氏に呼び出されたことは何度もあった。


その度に、聞かれればハッキリと「好きだ」と答えてきた。

けれどあんなことを言ったのは初めてだった。