加納欄の警察手帳 シリーズ24

あたしは、ソファーを背に、片膝を立てて座り直すと、スカートの中のナイフを2本取り出した。

「刑事ってのは、拳銃だけがお株だと思ってたけど」

「人には、向き不向きってもんがあるのよ」

と言うと、ナイフを指の間に握りしめ、男の方へ、体を向けた。

「その位置じゃ、アイツ狙えねぇだろ」

ミナトが、言った。

確かに、男の前には、立派な観葉植物が立ちはだかり、この位置では、致命傷を与えることは難しかった。

あたしは、グッとナイフを握りしめると、立ち上がり、男目掛けて、ナイフを放った。

ガサッと、ナイフが観葉植物に当たった。

男は、その音に気づいて、こちらに向かって、最後の弾を発射させた。

あたしは、右に飛び込み、回転しながら男の真正面に出ると、ナイフを取り出し胸の位置で構えた。

男は、苦痛な顔をすると、その場に倒れた。

あたしは、ナイフを元に戻し、ゆっくり立ち上がると、鼻から息を吸い込み、口からゆっくり吐いた。

「終わったのか?」

ミナトが近づいて来た。

「まぁね」

「よくもまぁ、あの邪魔もんを簡単にやったなぁ」

ミナトが、感心する。

「観葉植物に当たった奴が致命傷与える事が出来るわけないでしょ」

と言って、男の所まで行き、後肩に刺さったナイフを抜いた。

「いつの間に……」

ミナトが、あたしの顔を見た。

「1本はフェイク。こっちに気を向けさせるために、観葉植物にわざと当てたの」

「もう1本は?」

「そこの天井目掛けて投げただけ」

「天井……?マジかよ」

あたしのナイフは、1本は観葉植物に、もう1本は天井の壁を利用し跳ね返った先に男の肩を直撃させた。

あたしは、鮎川さんの様子を見に行った。

鮎川さんは、案の定、上から落ちてきた鉢植えにぶつかり、伸びていた。

「ミナト君、ソイツここまで運んで」

あたしはミナトにお願いをした。

「……チッ。めんどくせぇな」

呟きながらも、ミナトは男を鮎川さんの所まで運んでくれた。


いいトコあるじゃん。


「おい。俺は関係ねぇことだろ。これで消えるぞ」


まぁ、今回の事件に関しては、ミナト君何にも関係ないんだよね。