「彼女と言えば」


と、相変わらず何かに熱中していた恵里が突然声を上げる。
ニヤリと、笑いながら。あたしはその笑みに何となく危険を
感じた。…嫌な雰囲気だ。空気がこう…。


「光って、いつもその指輪付けてるよね」


…そこに触れるか。生憎環は長袖で手を隠している所為か、見えていないらしい。
まぁ、そのほうが都合がいいんだけど。環のまでバレちゃ、それこそ
茶化されるに決まってる。お揃いの指輪をつけてる人なんて、
カップルくらいしかいない。


「何かあんの?」

「いや…別に」

「何か隠してる」


そりゃぁ、隠すさ。環とお揃いの指輪だなんて言えっこない。
付き合ってるわけじゃないのに。ただ、ガキの頃の想い出にしか過ぎない。
けど、ガキの頃の想い出を延長してるあたし達ってどうなんだろう。
あたしは、別に恋とか興味なくて、付き合うとか興味ない。
じゃぁ環は?指輪を付けてるって事はまだあたしの事好き?
それとも、想い出の延長?

…考えたくも無い。嫌な思い出を掘り返しそうで。

いや、怖いのかもしれない。
ううん、怖いんだよ。きっと。