きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜

「いや、そうじゃなくて・・・たまたまお腹すいた土方さんが見つけたのが総司のお饅頭だったらしいんだ。」


「へぇ〜。それで?」


土方さんが甘味好きではないことに安心しつつ、話の続きを促した。


「うん。それで、土方さんは総司のお饅頭を食べちゃったんだけど、それを知った総司がさぁ・・・」


「総司がどうしたの?」


「刀振り回して土方さん並の鬼の形相で土方さんを追いかけ回したんだよ(笑)いや〜、あの時の総司の豹変ぶりは面白かったなぁ。自分は絶対に追いかけられたくないけどね。」


「土方さんはどうなったの?」


私は土方さんがどうなったか聞きたくて、平助くんに聞いた。


「ん?土方さんはさ『韋駄天の歳』って言われるぐらい足が早くてさ。見事、総司から逃げ切って、新しいお饅頭を買ってきて総司を落ち着かせたんだ。」


「へぇ〜。そうなんだ。」


過去のこととは言え、土方さんがケガをしなかったことに安心した。


「うん。だからさ、総司の甘味だけは盗っちゃダメだよ(笑)」


「あはは。そうする。」


「よし。それじゃ、そろそろ屯所に帰ろうか。」


言いながら平助くんは席を立った。


「うん。平助くん、ごちそうさま。」


「どういたしまして。」


支払いを済ませ、私たちは並んで屯所へと帰ることにした。