きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜

「土方さん!」


廊下に出た私は土方さんの姿を見つけ、慌て声をかけた。


「・・・華か。」


「行かれるのですか?」


私は振り返った土方さんに聞いた。


「ああ。」


土方さんは言葉少なに答えた。


「お気を付け下さい・・・」


闇討ちとは言え、相手はあの芹沢さんだ。


抵抗されれば簡単にはいかないだろう。


「大丈夫。俺たちは無事に戻ってくるさ。」


土方さんのその言葉はまるで自分に言い聞かせているようだった。


これから土方さん達がやろうとしてる事はかなりの危険を伴うのだ。


「そろそろ時間だな。俺は行く。華は広間に戻ってろ。」


そう言って、踵を返した土方さんの手をギュッと握った。


「ご武運を。」


その言葉に土方さんは振り返り一瞬ハッとしたが、すぐにいつもの顔に戻り、一つ頷くと廊下の向こうへと消えて行った。


土方さん、総司、山南さん、原田さんの4人がどうか無事に戻ってきますように・・・


私には祈る事しかできなかった・・・