きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜

席には座ったものの、今夜起こる事や土方さんの事をどうしても考えてしまい、暢気に宴会を楽しめそうになかった。


「・・・ちゃん?お華ちゃん?」


考え込んでいた私は慌て声のした方を向くと平助くんが徳利を持っていた。


「はい。」


「?」


私は平助くんの行動が何を意味するのか分からず、首を傾げた。


「ほら、お猪口持って。少しならお酒、飲めるんだよね?」


どうしたらいいか分からず固まっていた私に平助くんが言った。


「副長助勤の平助くんにお酌してもらうなんてとんでもない!自分で注げるよ。それより、平助くんこそお猪口持ってよ。」


私は慌て平助くんのお酌を断り、私が平助くんにお酌しようと、平助くんの持っている徳利をもらおうとした。


「お華ちゃん。今日は無礼講なんだから、気にしないの。はい、お猪口持って。」


「じゃあ・・・」


平助くんの勢いにおされ、私はお猪口を持ってお酌を受けることにした。


「今度は平助くんが持って。」


私のお猪口にお酒が注がれると、今度は私が平助くんにお酌するために徳利をもらった。


「ありがと。」


私はなみなみと平助くんのお猪口にお酒を注いだ。


「「乾杯!」」


私と平助くんの2人だけで乾杯をし、ご飯を食べ始めた。