きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜

中に入ると芹沢は隣にお梅を侍らし、朝っぱらから酒を飲んでいた。


「土方くんが何の用だ。」


すでに赤い顔をした芹沢が言った。


「実は明日の晩、新見さんの追悼も兼ねて角屋で隊士総出で宴会をしようかと・・・」


俺はあえて、酒のことを芹沢に注意せず、用件を言った。


どうせ明日には消えてもらうんだ。


最後ぐらい好きにさせておこう。


「新見の追悼か・・・」


芹沢が呟くように言った。


「ええ。ですので、芹沢さんにはぜひ、参加して頂きたく。」


「そうか・・・分かった。新見の追悼だ。行こう。」


芹沢が愛用の鉄扇を閉じながら言った。


「では、刻限はまた後程、お伝えします。それでは、失礼します。」


俺はそう言うと芹沢の部屋を出た。


「・・・新見よ。次はわしだな・・・」


芹沢のその呟きは俺の耳にも、隣のお梅にも届くことなく消えていった。




〜土方side・END〜