きみ、いとほし〜幕末純愛抄〜

「芹沢がどうした?新八。」


土方さんは持っていた筆を置いて永倉さんの方を見た。


「ああ。芹沢局長が大和屋に対して『天誅組には渡す金はあって京の治安を守る我ら浪士組には渡す金は無いて申すのか!』と激怒して大和屋に火を放ち焼き打ちに・・・」


永倉さんはとても辛そうな表情で土方さんに報告をした。


「チッ。芹沢の野郎、大和屋を焼き打ちだと?今すぐ屯所にいる隊士を連れて消化活動に当たれ!俺もすぐ行く。」


「分かった。」


そう言うと永倉さんは急いで部屋を出て行った。


「どうしよう。土方さん、芹沢さんが大和屋に火を放ったのって私のせいなのかな?私がさっき、大人しく芹沢さんにお酌をしていれば・・・」


私が芹沢さんのお酌を断ったせいで芹沢さんが大和屋に向かったことを思い出して、私は顔が真っ青になった。


「違う!芹沢の部屋からお前を連れ出したのは俺だ。だからお前のせいなんかじゃねぇ。」


そう言って土方さんは小刻みに震えだした私を抱き締めながら言った。


「華、お前は今日はもうこの部屋にいな。俺は消化活動を手伝ってくる。」


「分かりました。すみません。」


私は土方さんの言葉に甘えることにした。


「じゃあ、行ってくる」


そう言うと土方さんは大和屋へ消化活動に向かった。