『トイレ長いって!』


「ごっめ~ん!!」



あたしはちゃんと、笑えてるだろうか。


笑ってるはずなのに、別のこと考えてる自分がわかんない。


だけどそんなあたしにお構いナシに、現実は突き付けられて。



『結衣、英語の辞書貸して。』


「―――ッ!」



タ、タケル…!


嫌でも口元が引き攣って。


本当は、“何で昨日、あんなことしたの?”って聞きたかった。



「…タケル、結衣と付き合うことになったんだって?
どっちから告ったの?」



何でこんなこと聞いてるのかなんて、まるでわかんなくて。


だけど、聞けるわけがないんだ。


結衣の前で、“キスをした理由”なんて。



『もー、そんなの良いじゃん!!』


タケルの代わりに、やっぱり顔を赤らめた結衣が答えてくれて。


だけど全然、答えになんてなってなくて。


でも、本当のことなんて聞きたくなかったから、どっちだって良い。



タケルはあたしを無視するように、結衣の辞書を手に取って自分の席に戻った。



「…む、無視?」



今度は、無視か?!


キスの次は、無視ですか?!


何だか怒りが込み上げてきて。



『…まぁまぁ。
タケルもきっと、テレてんだよ。』


なだめるように、七海が言う。