『―――美咲!
ちょっとお隣まで、回覧板持って行ってよ。』


「あーい。」


適当に返事をし、机の上に置いてあった回覧板を手に取り、上着を羽織る。


さすがに“お隣”だけあって、10秒と掛からないわけだけど。



だけど“お隣”なんて言い方は、何て他人行儀なんだろうと思う。


だってあたしは、物心ついた頃にはもぉ、お隣さんは“第二の我が家”みたいなもんだったし。



―ピーンポーン…

何ら緊張することもなく、チャイムを押す。


すると中から足音が聞こえ、中の住人が玄関まで来たことを教えてくれた。



―ガチャ…

『はーい!』


「おばちゃん、回覧板だよ。」


『あら、ありがとう♪』


手渡すあたしに、隣のおばちゃん(と言うと、いつも怒られるけど)は笑顔を向ける。



「タケルは?」


『あぁ、あの馬鹿なら部屋にいるよ?
上がって行けば?』


問いかけるあたしに、おばちゃんは何の躊躇もなく言う。


なのであたしも、何の躊躇もなく中に入り、勝手知ったるように階段を登る。


まるで我が家のように足を進め、一つのドアをノックした。



―コンコン!…

「タケルー!
勝手に入るよー!」


返事を聞くこともなく、あたしはドアを開けた。


ガチャッと開けた瞬間、目が合ったのは口元を引き攣らせる男。



『…最悪。』


まるで嫌味のようにしか聞こえないが、軽く無視をして勝手にベッドに腰を下ろす。


だってココは、“第二の我が家”だから。