そして、藤沢は
1着で、ゴールした。
タイムは、7分10秒
自己記録更新だった。

C・D組でトップだ。
学年全体(女子)では、5位らしい。

藤沢は、自分自身でも、信じられなかった。

「わ、私本当にクラストップなの…」

余りの嬉しさに、
体全体が震えていた。

「藤沢さん、本当に速くなったね。」

「やっぱり陸上部は違うね。」

「速くなるコツとか教えてくれない?」

授業終了後
クラスの女子が、
藤沢の所へ駆け寄った。

「藤沢さん本当に毎日クラブ頑張ってるもんねぇ…」

「大和さんに乗っていじわるして、ゴメン。」

「良いよ。良いよ。全然気にしとらんからさ。」

藤沢は笑って応えた。

「ねぇねぇ、藤沢さんって広島から転校してきたんだよねぇ。」

「あたし、小学校の修学旅行で広島行ったよ。」

「広島って、海に浮いてる鳥居あるよね。」

「厳島神社の事かねぇ。宮島は本当に良い所だよ。ホント、夕焼け空が綺麗で。」

「さすが藤沢さん。詳しい~」

「他に有名な場所とかある?」

「今日お弁当一緒に食べよ~」

思えば藤沢は、春己とユウ以外に、友達が居なかった。
入学即座に、体育の時間に、いじめの標的にされ、毎日辛い思いをした。

しかし今
クラス全体が、藤沢の努力に驚嘆したのだ。

藤沢は変われたのだ。

「陸上」という
スポーツを通じて。
しかし、努力家の、藤沢はこれで満足はしていないだろう。
更なる向上心を抱き これから約2年間陸上に励んでいくだろう。

「よかったな。藤沢さん。」

「あっ、森戸君!」
「藤沢さん本当に良かったよ。フォームも綺麗だった。」

「森戸君と大竹君のおかげだよ!」

「本当にありがとうね。」

春己は顔が真っ赤になった。

春己自身あまり、人に感謝される事がなかったし、まして女の子に感謝されるなんて、1度も無かったから、照れくさかった。

「あれ、どーしたん?顔真っ赤だよ。」

「な、何でも無いよあ、いけね。愛人に用事あったんだ。」
春己はあわてて、走って行った。

「…ありがと!森戸君」