大学側が提供しているアパートはボロくて映画に出てくるような昭和の色を出していた。


一人が痛く感じる…


「はぁ」


広がる沈黙を消すように声を出してみるが痛さは無くならなかった。


その痛さに耐えきれずベランダに出て深呼吸し暗い空を見上げた。

きれいだな…

「月を見て何を歌う 人魚姫…駄作だな」


こんなんで
ミュージシャンなれるかよ…


俺は空に向けていた目を下へと移しタバコをくわえたが…


「月を見て何を歌う 人魚姫 君が歌う歌は 愛があふれるでしょう〜。月を見て何を歌う〜…。」




さっき即興で作った曲が綺麗な女性の声で聞こえ、くわえてたタバコをポロリと落とした。


何で俺が作った曲を…しかも新しく歌詞つけくわえてる…



え?何ナニなに。
どこから?隣?!

隣…いや。この三階には俺しかいないはず…
幽霊?


背筋がぞぉっとする。
ぞっとしている間も隣の人はさっきから同じ所を歌っている。