背後からあいつの肩に手を置こうとしたとき、フユの携帯が震え始めた。



ディスプレイを見た瞬間、ため息をついている。


‥電話から聞こえてきたのは、低い男の声だった。




『もし、もし』

「もしもし、坊ちゃんですか?‥至急、おうちにお戻り下さい。社長がお呼びです」
『おれまだ学校なんだけど』


「至急、お願いします」



電話を切り、荷物を持って教室を出たフユの背中を、ただ見ているだけしかできなかった。