「俺、お前に怖い思いさせたのか?」
その意外なセリフに私は布団から顔をだし、晴紀を見つめた。
今、なんて?
晴紀は伏し目がちで私を見ない。
戸惑ったような困ったような表情で入り口で立ち尽くす、そんな姿もまるで雑誌から切り取ったようだ。
黙って晴紀を見ていると、顔を上げた。
「先生の時のように何か怖い思いさせたか?」
先生の時のように?
まさか、それを気にしていたのか。
寝ぼけて何をしたか覚えてないから尚更心配だとでも言うようなそんな様子だ。
でも、でも。
「怖くは……なかった」
そう。怖くはなかったんだ。
先生に触られたときのように、鳥肌が立つような嫌悪や気持ち悪さは全くない。
晴紀はホッとしたような顔をしたあと、でもと首を傾げた。
「なら、どうしてそんなに怒るんだよ」
「どうして? だってあんな風に抱きしめられたら」
「そっか。俺また寝ながら抱きしめたのか」
私がムッとして強い口調で言い返すと晴紀はシュンとした。
そしてボソッと悪かったよとつぶやいたのだ。
「謝った……」
「なんだよ、俺が謝っちゃ悪いかよ」
だって謝るなんて思わなかったし、素直な反応にこっちが戸惑ってしまう。
今日の晴紀はなんだか変だ。
いや、変なのは私か。
「い、いいよ。もう」
「あのさ、ひとつ聞いてもいいか」
「えっ?」
晴紀は近寄ってきてベットの端に腰掛ける。



